春に笑って、君宿り。

そうなんだよ。
雪杜くんは、かっこいいよ。


「ケンカも強いなんてもうかっこよすぎる!!」

「毎日のように夜出歩いて、ケンカして警察のお世話になってんだろ?」

「えー、めっちゃワイルドでかっこいい!!」

「女子って所詮顔だよな」


女子からの賞賛と、男子からの皮肉。
そのどれもに対して、表情を変えないまま否定も肯定もしない雪杜くん。

こうやってありもしない噂が一人歩きして大きくなっていくんだ。
だってこの間萌ちゃんから聞いた噂より大事になってる。


――「……人を見た目で判断するような人に知ってもらいたいと思わないし、別にいい」


そんな言葉が頭をよぎる。
なんてない顔してるのに、少しだけ寂しい声が強く残ってる。

そうやって今までも閉じこもってきたんだね。
人にきちんと自分をわかってもらえなくていいって強がって、遠ざけてきたんだね。


「っ雪杜くん!!」


結局こうなる。
私はこの先、君を目の前にして。
前に進めなくなるなんてことないんだろうな。


「……え、は!?」


すごいね。
周りにたくさん生徒がいるのに、雪杜くんもすぐに私のこと見つけてくれた。

友達の距離感、きちんと考えてねって言ってたのに
雪杜くんだって変わらず手を広げてくれる。