春に笑って、君宿り。

***

「はなのー」

「カノちゃんっ」


放課後。
掃除当番で教室のゴミ箱を持って移動しようとしたとき、声をかけられる。


「テストも終わったことだし、なんかスイーツでもど?」

「うん、行く!! これ捨てたら行くから、先に行ってて!!」

「じゃあ校門で待ってるよ~!!」


そう言うと、萌ちゃんと乃奈香ちゃんは先に教室から出ていった。
よし、私もはやく済ませちゃおう。


「………」


ちょっとだけ。
ちょっとだけ、1年生の教室の前なんか通っちゃおっかな……。

うん、そっちのルートの方が近そうだし?

……なんて。


「ちょっとどころじゃなく、私らしくないなあ」


もやもやも一緒に捨てられたらいいのに。

抱えるゴミ箱を見て、ふうとため息ひとつ。


雪杜くんが友達だと言うなら。
それでいいのかな。

……いいの、かな。