春に笑って、君宿り。

私が一方的に好きなだけで、雪杜くんは私を好きなわけじゃない。
それは、そう。

だって他に何もいらないって私が望んだ。
ただ伝わってくれたらそれでいいって私が願った。

でもちゃんと伝わってるかわかんない。


お化け屋敷に入る前、信濃くんに「彼氏候補なんだっけ?」と聞かれた雪杜くんの言葉がよみがえる。


――「別に、そういうわけじゃないですよ」


多分、伝わってない。

雪杜くんは私と友達でいたい?
私は、雪杜くんとどうなりたい?

雪杜くんに私の気持ちが伝わったその先で。


「いーっぽん、にぃーほん……」

「ぎゃっ!?」


気味の悪い声が急に響いて、驚いた私の体が跳ね上がった。


「ゆっくり……あなたのユビヲウバッテイクカラネ……」

「わああああっ!!!」

「ちょ、カノ!?」


大量の涙を流しながら走り出す。

何も見えない誰かここから出して、怖い。

暗いのも、お化けも。

わからないのが一番怖い。