*花暖side*

「カノ、お前どうせ撃沈だろ」


隣の席から余裕の表情で話しかけてくる環くん。
いいな環くんは頭良くて。きっと悩みなんてないんだろうね。
……いや、もちろん撃沈でしたけど。

やっと終わった学力テスト。ええ、すっかり忘れてました。

覚えていたとしても、きっと勉強なんて手につかなかったと思うけど。


だって、あの遊園地デートの一件で色々ありすぎて。

最後の雪杜くんの苦そうな、ぐしゃっとしたような笑顔が頭から離れなくて。


笑顔が好き。
雪杜くんの笑顔が一番好きなの。

あんなに痛そうな笑顔もするの?

私がさせた、でもわかんない。

だって頭の中雪杜くんだけじゃなくなっちゃった。


「……」


油断すると泣きそうになる。
テスト中だって何度も泣きそうになって、鼻をすすった。

ビリッと電気が走ったみたいに歪んで、我慢しての繰り返し。


会いたいよ、雪杜くんに会いたい。

でも前みたいに簡単に足が向かないの。
体が動かないなんてこと初めてで、なにもかもわかんない。


雪杜くんのことを想うと、必ず信濃くんの言葉が浮かんでくるの。