だから、「友達」に簡単にこのゼロ距離を許さないで欲しいんですけど。

何で俺が、こんな人にいちいち振り回されてるんだか。


「ほっぺ、これ……」

「え、ああ」


さっき、誰かさんが飛び込んできたときについたであろう傷。
だから言ったでしょ、危ないって。

……まあ、あんたが怪我してないならいいんだけど。

そんな申し訳なさそうな顔しなくていいって。

似合ってるから、その桜のヘアピン。


「ごめんね、私また……」

「別に、痛くない」


だから、そんな顔しなくていいって。


「何でとるの、とらなくていいよ」

「でも、これのせいで雪杜くんに怪我させちゃった」

「……ねえ」


ヘアピンを握る手をきゅっと握る。

冷たい。

よっぽど怖かったんだね。


「これからは『友達』の距離感、きちんと考えてね」


痛くない。

……痛くない。