春に笑って、君宿り。

「うわああああんっ!!!」

「!?」


少し遠くの方で叫び声。

見れば、大きく口を開けて目から滝のように涙を流しながら
両手を伸ばしてこっちに向かってくる……お化け。


「きゃっ、カノちゃんっ!?」

「ゆぎもりぐん……っ!!!」

「ぅ、わ」


とっさに立ち上がって、そのお化けを受け止める。
ピッと頬に刺すような痛みが走った。

ちょっと、鼻水俺の服につけないでよね。


「うう~……っ!!!」


腕の中に埋めていた顔をゆっくり上げる。
あ、だめだ。すでに鼻水が服についた。


「……なに、どうしたの」


というかトーガ先輩は? 一緒じゃなかったの?
抱きつく相手、間違ってるんじゃない。


「おばっ、お化け!! あああ、怖い!! 暗い!! 私明日から指が一本ずつなくなっちゃうの!?」

「は? 指?」


ごめん。
今のあんたの顔のほうがよっぽど怖いし、お化けのほうから逃げてくんじゃない?

……仮にも好きな人の前で、すっごい、顔……