春に笑って、君宿り。

「今日だって、すごく楽しみにしてたんだよ」

「……そりゃ、大好きな友達と大勢で来られるんだから、あの人は嬉しいでしょうね」

「ふふふ、それもそうかもしれないけど、一番は雪杜くんに会えるからだと思ったよ」


そういえば、今日一日ずっと「デート」って言ってた気が。
どれだけ否定しても腕に絡みついてきて、笑って。
俺が何を言っても、笑って……。


「……あれ」


そういえば。
お化け屋敷のくだりを思い出す。

トーガ先輩に手を引かれて立たされて歩き出すあの人の姿。

あのとき、あの人、笑ってた……っけ。


「……」


いや、だから。
関係ないんだってば。


「あの、ね、雪杜くん。カノちゃんは……」

「小池先輩」


この場にいなくても色濃く残る君の色。
簡単に俺の中に入ってこないでよ。


「ありがとうございます。その先は、俺が自分で知っていきます」


知れば知るほど、濃くなっていくから。
一度に染めようとしないで。


「ふふ、うん。もし何か聞きたいことがあったら、いつでも聞いてね」

「多分ないと思うけど、万が一何かあったら、はい」


誰から聞いたどれでもない、俺が見た君を知っていくから。

優しく笑う小池先輩につられて、フッと微笑んだ時。