春に笑って、君宿り。

「放課後、ちょっと買ってきてくれたりしない?」

「!!」


そうか、その手があったか!!


「信濃く「ちょっと待てよ」


さっきも聞いた低い声。
同時に目の前に現れる大きな背中。
覚えのある香りが鼻をかすめる。


「タオルなら、俺のを貸してやるよ統河」


声の主は、環くんだ。
どんな顔をしているのかはわからないけど。

……なんか怒って、る?


「なにもこいつに買ってこさせることないだろ」


続く環くんの言葉に、信濃くんの眉がぴくりと動いた。
あ、まずい。


「信濃くんごめんね、私あとで買ってくるよ!!」

「……お前っ」

「元はといえば私がタオルを持ってくるの忘れたのが悪いし、信濃くんに部活頑張って欲しいもん」

「……」


黙っちゃった。

環くんはいつも、私が信濃くんの話をすると何も言わなくなっちゃう。

ごめんね、多分困らせてるんだよね。
ごめんね。