春に笑って、君宿り。

「やっぱり、優しくていい人だね、雪杜くん」

「……は?」


いや、だから話がいちいち唐突なんですけど。
頭の上にはてなを浮かべていると、今度はくすっと笑った。


「カノちゃんから聞いてた通り」


いや、え。
あの人、友達にまで俺の話してんの……?

どうせ、他の奴らと同じなんでしょ。
あることないこと勝手な想像のままに騒いで、勝手に事を大きくしてる。
いったいそれの何が面白いんだか。

って、いつもなら思うところのはずなのに。


「……」


気になってる。
あの人が、どんなふうに俺の話をしているのか、気になってる自分がいる。

だって、目の前の小池先輩の表情を見たら、悪いことを言っているようには感じないし。

気にする必要ないのに。
今までみたいに放っておけばいいのに。

……追いかけるのは、視線だけで十分なのに。


「……どうせ、くだらないことでも話してるんでしょ」


ああ、なんでこんな言い方しかできないんだろう。
「どんな話をしてるんですか」って素直に聞けばいいのに。

いつも俺は、それができない。

つまらない意地と臆病な俺の方がいつも勝ってしまう。