春に笑って、君宿り。

「そういや、ユキメ後輩が次のカノの彼氏候補なんだって?」


不敵に微笑みながら、トーガ先輩がそんなことを言う。
ちょっと待ってよ、なんでここでその話題になるわけ。

だいたいあの人の言ってることで、俺が本気になるわけないでしょ。

どう考えたってはき違えてる。

誰とでもすぐに付き合って
別れたその日に出会ったばかりの男に告白して
人目も気にせず、恥ずかしがることなくベタベタしてきて


「……」


完全に年下のただの後輩としか思われてないでしょ、こんなの。
一時の失恋のダメージを修復させるために、俺を利用しないで欲しい。

というか完全にとばっちり受けてるだけなんですけど、俺。


「別に、そういうわけじゃないですよ」

「ふーん」


なに、その「ふーん」。
元彼の余裕的なやつ? 笑えない。
この人をパシリとしてしか見てなかった奴が、元彼気取るな。


……いや、だから。
なんで苛ついてんの。


1人別のベンチに座っている俺の元へゆっくり歩いてくるトーガ先輩。


「じゃ、遠慮しないけどいいってことだよね」

「……?」


多分、俺だけに聞こえる声でそう言った。