春に笑って、君宿り。

「あ、もしかしてぐるぐる回るの、苦手?」

「苦手じゃない、普通に乗れるし」


肩をつかんで、グッと腕を伸ばして距離をとる。

悪いけど、俺はその辺の男と違ってそんなんじゃ絶対好きにならないよ。

簡単に人に「好き」って言えるほど軽い気持ちなんでしょ。
簡単にゼロ距離を許してしまうほど、俺を男として見てないってことでしょ。

そんなの、どうやって信じろって言うの。


体を離して、歩き出す。

……なんでちょっと苛ついてるんだろう。


「なにしてんの、乗るんでしょ。コーヒーカップ」

「うんっ!!」

「っ、だから、勝手に腕組まないでって」

「あ、ごめん!! えへへ」


本当に、人の話少しは聞いたらどう。
口に出そうとして、ため息で終わる。

いつだって何を言ったって、そうやって笑われたら毒気を抜かれる。

仮にも「好きな人」とこんなに密着したら、少しくらい意識でもするもんじゃないの?
あんたの中の好きの概念ってどうなってんの。

……別に、知る必要なんて俺にはないんだけど。


「雪杜くんとデート、楽しいなあ」


違うから。
デートじゃないから。

誰かこの人、なんとかして。