春に笑って、君宿り。

ふと名前を呼ばれて信濃くんの方を見ようとした、けど。
彼を超えたずっと向こうに、待ち焦がれていた人の姿がちらっと見えて。


「!!」

「あ、やっと来た。おっそいよ二人とも……って、はなの!?」


絶対絶対、声の方が早く届くのに。
君を見るとどうしたって体が先に動くんだ。


「ほんと生意気だよな後輩のくせに!!」

「はあ!? タマキ先輩こそもう少し先輩らしくしたらどうなんですか」

「かわいくねえ!!」


そんな会話が聞こえてきて、もう少しその先を聞きたいって一瞬だけ思うけど止まらない。


「別にかわいいなんて思ってほしく」


あ、やっと私に気付いてくれた。
えへへ、環くんと話すのそんなに楽しいんだ?


「な……」


相変わらず、手を広げてくれるところ大好きだよ。


「雪杜くんっ!!」


私は迷わず雪杜くんの腕の中に飛び込んだ。
少しよろけるけど、きちんと受け止めてくれるところも大好き。

大好き!!