春に笑って、君宿り。

雪杜くんも立ち上がって、右手の甲で自分の口元を隠す。
そんな仕草も初めて見た。
かわいい、好き。


「……さっきから好き好きって、それしか言えないわけ?……っ」


彼の言葉が止まって、驚いたように私を見るから、やっと気付いた。


「……、あ、れ?」



おかしいな。
気付いたら、涙が。

好きすぎて涙が出たの。
悲しいでもなくて、寂しいでもない。
そんなのじゃない、初めての涙が出たの。


「ちょ、なにも泣くこと……」

「好き」

「……っ」

「好きにならなくてもいいから、好きでいさせて……」


想いが溢れて涙になることがあるって初めて知った。
嫌じゃないのが不思議だね。

君にどうにかして欲しいわけじゃない。
なにかをして欲しいわけじゃない。

ただ伝わって欲しいだけなんだよ。本当に好きだって。


「泣くのは、反則でしょ」

「うっ」


乱暴に、自分の制服の袖で私の目元をぐいっと拭ってくれる。
優しい。