春に笑って、君宿り。

***
「……」

「……」


ブランコに乗って、ひたすら黙っている高校生の男女。
いい雰囲気か、といわれると……どうなんだろう?

緊張してなにも言葉が出てこなくて、でもこの時間が終わって欲しくなくて。
もしも言葉が浮かんできていたとしても、多分この沈黙を私には破る事なんてできなさそうだよ。


「ねえ」

「っ」


やっと雪杜くんが沈黙を破った。


「あんたさ、今朝フラれてなかった?」

「えっ」

「あの会話の感じ、あれ付き合ってたやつじゃないの?」

「う、うん……それはそうなんだけど」


やっぱりおかしい?
今朝フラれたばかりなのに、放課後君が好きだって伝えに行くのは。


「はあ……誰でもいいってこと?」

「え?」


声色が変わる。
心地の良かった彼の声が、怒気を含んで私の胸に突き刺さってくる。


「ち、ちがうよ、今は雪杜くんのこと……」

「『今は』って、なにそれ」