春に笑って、君宿り。

「なあ奈冷」

「今度はなんですか」

「カノのこと、よろしくな」

「……それに関しては本人次第ですけど」


空っぽになった皿に向かって両手を合わせ、「ごちそうさまでした」と呟いてから俺を見てくる。


「ま、もうちょい頑張ります」


ほんとに頼んだぞ奈冷。


言葉の雨に怯えて、走って逃げ続けているカノに。
俺は一時的に傘をさしてあげることしかできないんだよ。


そろそろ、雨宿りさせてやってくれな。


そんで雨が止んだら

きっと手をつないで一緒に歩いてあげてほしい。


テーマは春。

はじまりの季節に、カノの隣にいるのはお前がいい。



……さて。


どんな花を咲かせようか。


Fin.