春に笑って、君宿り。

けど決めたんだ。

ああ早くキャンバスと向き合いたい。
とびきり大きなキャンバスに描くんだ。

初めて恋を知ったカノと、奈冷の心をめいっぱい表現したい。

そうだ、テーマは春にしよう。
今まで絵だけの展示会だったけど、今回はオブジェなんかも作ってみるのはどうだろう。

創作意欲がふつふつと湧き上がる。


「まあ、いいですけど」


そのかわり、と続ける。


「誰よりも先に見せてくれます?」

「え、それって」

「タマキ先輩ともあろう人ならそれくらい、できますよね?」


挑戦的な顔。

あーあ、そうきたか。


「はー? なめんな余裕だわ、公開前日に招待してやんよ」

「さすが」

「代わりにお前の気持ち全部俺にはさらせよな?」

「……」


あからさまに嫌な顔すんなよ。
公開前日に招待するなんて本当はしちゃいけないんだぞ。
俺頑張っちゃうんだから、お前も頑張れよ。


「……カレーの味、次第で決めます」


ピンク色に頬を染めて、ふいっと目を逸らす奈冷。
本当に子供みたいな仕草をする。

カノはこういう奈冷のことも好きだと思うんだろうな。


「美味いに決まってんだろ、誰だと思ってんだ」

「神経系に弱いタマキ先輩」

「……マジでそれはそう」