春に笑って、君宿り。

「だって、タマキ先輩だって花暖先輩のこと……」

「あー」


よく勘違いされるやつ。
まあ、統河は完全に勘違いしてると思ってたけど、まさか奈冷までとは。


「カノは恋愛対象外」

「え、あんなに大事にしてるのに」


大事にしてるどころじゃない。
もはや親の心境だ。


「カノは、男とか女とか関係ないくらい俺の大切な人だよ」

「……」


俺の言葉を聞いて、奈冷はまた表情をやわらかくして食器棚に寄りかかった。


「俺、来年の春にまた展示会開くんだけど」

「へえ、おめでとうございます」

「奈冷、お前協力しろ」

「俺絵は描けませんけど?」

「そうじゃなくて」


肉に火が通りきる前に、あらかじめ測っていた水を鍋に投下。
そして奈冷に親指を突き立てた。


「俺決めた。お前とカノを表現した作品をメインにする!!」

「…………はい?」


奈冷は腕を組んだまま首を傾げる。