春に笑って、君宿り。

俺はよくあいつが泣いてるところを見てきた。

うまくいかなくて
自分が悪いと責めて
どうしたらいいかわからないと悩んで
もう嫌だと投げ出したくてもできないもどかしさで

そのたびに「頑張れ」と励ましてきた。

カノは知らないだろうな。
「頑張れ」と励ますのもけっこうキツいんだよ。


「……タマキ先輩」

「うん」


これは俺の直感だ。

確証も根拠も何もない。


「……俺、花暖先輩が好きです」


それでも、奈冷のこの真面目な表情だけで十分思える。

きっと奈冷なら、と。


「そっか」


奈冷の言葉を聞いて、つい口角が上がる。


「……人にこんな恥ずかしいこと言わせておいて、『そっか』ですか」

「今、めちゃくちゃ嬉しくて他に言葉出てこなかった」

「タマキ先輩、いいんですか?」

「え?」


奈冷は立ち上がって、俺のもとにそっと近づいてくる。