春に笑って、君宿り。

先日、修学旅行から帰ってきてから思うところがある。

俺の幼なじみの熱烈なアタックに対して、あんなにも迷惑そうにしていた奈冷の態度が明らかに変わった。
あいつを見る目がめちゃくちゃ優しくなったし、統河に対しての敵意もむき出しになってるし。


「カノに料理、作ってもらわねーの?」

「は、はあっ!?……った……」


いや、だから。
わかりやすいって。

あからさまに動揺してテーブルに膝をぶつけ、両手でギュッとおさえながら小刻みに震えている。

それにしても痛そうな音したな。


「ちょ、なんでそこで花暖先輩の名前が出てくるんですか!!」


ほら。
いつも「あの人」呼ばわりだったのに、いつの間にか名前で呼ぶようになってるし?

まあ……ずっとあいつを見てきたこっちとしては
カノの相手がお前だったらいいなとは思うよ。


「んや、ぶっちゃけカノのこと、どうなのかなーって思ってさ?」

「ど、うって……」


みるみる顔が赤くなる。
初めて見る奈冷の表情を見逃すまいと、奈冷を見つめていた。

……カノは今までいろんな男と付き合って来たけど、間違いなく今回があいつにとってのはじめての恋だ。
そんで多分初めてなのは、この反応を見る限り奈冷も同じだろう。

いつからだったか。
カノが本当に恋をしたときに、俺なりにその気持ちを作品にしたいと密かに思っていた。

ただ人の言うことを聞いて、願いを叶えようとするだけじゃなくて
もっと自分の気持ちに素直に動き出すカノの中の感情を、そのまま。