春に笑って、君宿り。

「野菜なんて入れる必要ないですから」

「!?」


けろっとそんなことを言ってのける奈冷。
おま、せめてにんじんは入れようぜ?


「奈冷、お前もしかして野菜が嫌「食べないだけです苦手でも嫌いなわけでもないですから」


被せるように言ってくる。
これは確実に野菜嫌いだ。

……と言いつつ、奈冷の家に来る度にカップ麺を差し入れる俺が「野菜を食え」とは言いづらい。

今度から野菜持ってくるか……? まずはにんじんから……。


「言っときますけど、今度からもカップ麺でお願いしますね」


じゃなきゃ、家入れませんから。
そう言って今日一鋭く睨まれるので、黙って頷いた。


「……つってもなあ」


カレーの具が肉だけって。
作るこっちとしては楽で助かるけど、にしても肉だけって。

冷蔵庫から肉を取り出して、リビングと対面式のキッチンに立つ。

待っている間医学書でも読んでいたらいいのに、
なにが楽しいのか奈冷は俺をじっと見ていて
時折嬉しそうに目を細めている。

久々のはずである手料理が俺のでいいのだろうかと、ここに立つといつも思うが
そんな奈冷の表情を見てやる気が出てきてしまうんだから、俺ってばほんといい先輩。


「なー奈冷」

「はい?」