春に笑って、君宿り。

そういう子供っぽい仕草に俺は本当に弱い。

もう1人ガキみたいな幼なじみがいるから、ついつい「俺が面倒見なければ」という気持ちになるのだ。

仕方ないなと重い腰を上げて、とりあえず冷蔵庫を開けて食材の確認。
……と言っても、こいつ一人暮らしだし大した食材なんてあるわけないんだけど。


「……お?」


肉がある。珍しい。


「奈冷、お前の冷蔵庫に肉が」

「べ、別にわざわざ用意したわけじゃないですから。たまたま安かったんで買ってみただけですから」


しかも肉の隣にはカレールー。
……わかりやすすぎるだろ。


「奈冷くんはカレーをご所望かな~?」

「…………」


口をとがらせたまま、こくんと小さく頷いた。
かわいいすぎるだろ。

後輩っぽくないし生意気だけど本っっ当こういうところは死ぬほどかわいい。


「……奈冷くん」

「はい?」

「野菜が見当たらないんですが」


カレーを作る事にしたはいいものの、にんじんやじゃがいもなど定番の野菜が見当たらない。
カレーを作ってもらおうとしたのに、用意したのが肉とルーだけとは、なにごとか。

……まさか材料知らないとか?
いやいやカレールーの箱の後ろに書いてあるだろ。