「奈冷」
「はい?」
「無理、どうしても思い出せないんだけど、脳神経の11番って」
「副神経ですか?」
相変わらずすぐに答えが向かい側から返ってくる。
「……じゃん、それの構成要素が」
「そこ、この間も躓いてませんでした?」
頬杖をついてから、仕方ないですねと微笑むのを確認して、俺も笑う。
油断していると、こいつが年下ということを忘れてしまいそうになる。
学年一位の成績で、かつ高校3年の範囲にまで手を出しているのだから。
「タマキ先輩ならもう少し考えたら答えくらい出せそうですけどね」
答えを焦らすとはこのやろう。
いったいどこでそんな先輩の扱いを学んできたんだ? おい。
「質より量だかんなー、あと答え探すより奈冷に聞いた方が早いもーん」
「『もーん』て」
奈冷はクスッと笑って、読んでいた医学書をぱたりと閉じた。
……え、医学書?
そういえばこいつの父親は医者だと、いつだったか言っていたような。
あまり踏み込んでいいのか分からず聞けずにいるんだけども。