春に笑って、君宿り。

「環くん、この桜って……!!」

「あれ、奈冷から聞かなかった?」


ちらっと雪杜くんを見るけど、わざとらしくふいっと向こうを向いちゃった。
むう!!
照れ屋さんなところも大好き!!


「なんだよせっかくあたしらが気を利かせたのに」

「あはは、照れちゃったんだね」

「ユキメ後輩はまだまだガキだなー?」

「トーガ先輩だけには言われたくないんですけど」


みんながそんな会話を繰り広げている間、環くんは桜の絵に向かって近づいていく。
私もその後を追って、環くんのとなりに立って
もう一度立派に咲く桜の木を見上げた。


「俺は小さい頃からお前のことを見てきた」

「うん」

「そんなカノが、初めて恋を知った」

「うん」

「お前の心の変化と、お前に恋を教えた奈冷を表現したかったんだ」

「……環くん……」


タイトルの横に書いている文字に視線を落とす。

……春の代表的な花。物事の始まりを大切な人と踏み出せますように……


「俺、センスいいだろ?」

「……うん、さすがだよ」