春に笑って、君宿り。

そろそろ一番奥まで来られたかな、というところで雪杜くんに名前を呼ばれる。
見れば、雪杜くんは目をまん丸にして真っ直ぐ前を見ていた。

どうしたんだろう。

私も慌ててその視線を追った。


「わあ……っ!!」


私の身長よりも遙かに大きいキャンバスに
力強く描かれた大きな桜の絵。

ピンクだったり、水色だったり、黄色だったり。
いろんな色が入っているのにそれが綺麗に混ざり合った、大きな桜の木。

そういえば環くんが「今回のテーマは春だ」と言っていたっけ。


「……は、あ……っ」


私は自分の息が止まっていることにやっと気付いて、大きく空気を吸い込んだ。


「ね、見て」

「え」


雪杜くんが、キャンバスの横を指差している。
そこにはこの絵のタイトルが書かれていた。


……「ひなたの夏雪メモリ」


「わあ、素敵なタイトルだね……!!」

「……うん」


春をテーマにした大きな桜に
夏と雪というワードが入ってるのがさすが環くんだなって思う。