春に笑って、君宿り。

にこにこして、萌ちゃんと乃奈香ちゃんも別ルートに向かって行ってしまった。


「花暖先輩」

「う、ん!?」


きゅっと、私の手を握る力が強くなる。


「……いこ」


紺色の瞳に私が映っていていつも吸い込まれそうになる。
胸がきゅうっと苦しくなって、ああ好きだなって。


「好き!!」

「……」


あ、聞こえないふりしてる。


「大好き」

「……」

「もう!! 大好きって言ってるでしょ!!」

「うるさいな、声が大きいよ!!」


あ、ごめん。
言われる度に顔がどんどん赤くなっていくのが可愛くて、つい。


「タマキ先輩の作品、早く見に行こう」

「……えへへ、うん!!」


ようやっと足を進めて、環くんの世界に入り込んでいく。