春に笑って、君宿り。

海の神:ポセイドンの息子で、美しい狩人と言われていたオリオン。

ある日月と狩りの女神:アルテミスと運命の出会いを果たし、2人はクレタ島で仲むつまじく暮らしていた。

しかし、2人の仲をよく思わなかったアルテミスの兄:アポロンが毒サソリを島に放ち、オリオンを島から追い出した。

海に飛び込み、随分遠くまで泳いだオリオンはクレタ島から見たら小さな流木か何かに見えていて。


いくら弓の達人のお前でもアレは射抜けないだろうという兄の挑発に乗ってしまったアルテミスは、寸分の狂いなく愛したオリオンに矢を放った。


「アルテミスの願いでゼウスはオリオンを空にあげた。それからオリオン座の近くを明るく大きな月が通るんだって」


ほう……と星を眺めながら俺の話に耳を傾けている先輩。


「まあ、諸説あるしこればかり信じなくていいから」

「うん、面白かった!!」


そっかあ、と一言声をこぼしてから俺を見てくる。


「オリオンって、雪杜くんみたい」

「え」


そうしていつもそうやって、突拍子もないことを言ってのけるんだ。


「俺が? オリオン?」

「だって、さそり座が出たら逃げるように夏の空からいなくなっちゃうんでしょ?」

「うん」

「私がさそりで、それから逃げるオリオンは雪杜くん!!」

「っ」