春に笑って、君宿り。

***

「あ、私あれ知ってる!! オリオン座でしょ?」


やっと泣き止んだ先輩としばらく星を眺めていたとき
空を指差して誇らしげに声を上げた。

さすがにそれくらいは知っていて欲しいところだけども。


「うん、あたり」

「ねえねえ雪杜くん」

「さそり座は今は見られないよ」

「なんで分かるの!?」


分かるよ。
すぐ、顔に出るから。

特に寂しいときは露骨に顔に出る。

「寂しい」と言えないくせに
違う言葉や仕草で「寂しい」と伝えてくる。

だから決まって俺が「また明日」と言えば、これまたわかりやすく笑顔になって。

ほんと、ころころ表情が変わるよね。


「さそり座は夏の星座だから」

「そうなんだあ……」

「うん。それにオリオンはサソリが苦手だから、サソリが出てきたら逃げるように隠れていくんだよ」

「え、そうなの?」

「そ。色々と星座にまつわる話もあるけ、ど……」


結構有名な話だと思っていたけど先輩はどうやら知らなかったらしく。

目をキラキラと輝かせて
次の俺の話を待っているような表情に気づいて、

小さくため息をついてから
すこし、星座の話をした。