春に笑って、君宿り。

*奈冷side*

涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら
でも拭うこともせずに、真っ直ぐ俺を見つめてくる。

振り絞るように弱い声で、信じられないと何度も言うから。


「好きだよ、花暖先輩」


信じられるようになるまで、何度も伝える。
君が俺にしてきてくれたように。

いつだってひとりでよかったと思っていた俺の中に
まっすぐ飛び込んできて
気付けば君がそばにいるのが当たり前になってた。

何が君をそうさせたのかなんてわからないけど

何かを期待したり、何かを決めつけたりするんじゃなくて
本当にただ傍にいて、俺の中に濃く鮮やかに咲いていた。

こうして同じ時間をすごすのなら、君と一緒がいいと思うようになった。


昔から星を見るのが好きだった。

満点の星はいつまでも見ていることができて
周りの雑音もくだらない噂もどうでも良くなるくらい
時間が本当に止まったように俺を包みこんでくれるから。

嫌なことがあればよくここに逃げていた。
何もなくても、足がここに向かった。


君と、ここでこの星空を見たいと思った。


ひとりで、よかった。

けど、誰かと共有すること
同じ時間に一緒にいること

それは全部、花暖先輩がいいんだよ。