春に笑って、君宿り。

雪杜くんといられるだけで嬉しくて舞い上がってた頃に
勢いで言ってしまった言葉がふとよみがえる。

……「好きにならなくてもいいから、好きでいさせて」なんて、きれいごとだと思い知った。
そんなに簡単なものじゃないのに。

こんなに人に対して欲しがる自分がいるなんて、知らなかったよ。
なんてワガママで、独りよがり。

大好きな君が笑って過ごせるならそれでよかった。
一方的な想いでもよかった。

でもその笑顔に私が含まれていたいと思うようになったんだよ。

雪杜くんが、私をそうさせたんだよ。


自分じゃどうすることもできない、コントロールすることができない強い気持ち。
その気持ちにとらわれて悩まされている今

雪杜くんが私にとってどれだけ特別なのか、改めて思い知った。


「はいはい、そうだな」

「っ」


ふんわりしたタオルで、環くんが私の顔を優しく拭いてくれた。


「カノ、頑張れ」


そう。
散々弱音を吐いて、散々泣いた後は決まって
環くんは私に「頑張れ」って言うの。

いつだったか、「頑張ってる人に頑張れって言うのはよくない」という話を聞いたことがある。

これ以上どう頑張ったらいいのって思わせてしまうから、と。

でも環くんは、私の傍で私のことをずっと見てきて
私がどれだけ頑張ってるか分かってるはずで

それでも決まって「頑張れ」って言うの。