春に笑って、君宿り。

雪杜くんとばいばいをしてから
今日は真っ直ぐここに来た。

今までのことをばーっと環くんに吐き出して、それで、泣いた。

環くんはキャンバスに絵の具を乗せながら、うんうんと聞いてくれて
お兄ちゃんがいたらこんな感じなんだろうなといつも思う。
変わらないこの空間と、関係がとても心地いい。


「それで、カノは結局諦めるのかよ?」

「……ぐす……っ、うう……」


諦めたくないよ。
諦めたくなんかないし、頑張りたいよ。


「ゆき、雪杜くんに好きな人がいるなら、わ、私は……雪杜くんにとって、め、迷惑な存在、だから……」

「だよな、お前ならそう言うと思った」


ベタッと青の絵の具を押しつけるようにキャンバスにのせた。
小さい頃から思っていたけど、適当に色を置いているように見えるのに
できあがったときには綺麗な情景を表現した絵になっているんだから
やっぱり環くんはすごいと思い知る。


「でも……」

「うん」


雪杜くんと出会った時のこと。
もうずっと前なのに、昨日の事みたいに鮮明に思い出せる。

それだけあの日の君の笑顔は、私の中に今でも色濃く残ってるんだ。


「私が、雪杜くんの好きな人になりたいいい……」


私がその笑顔の先にいたい。
私のことで、あの笑顔を浮かべて欲しい。