春に笑って、君宿り。

「雪杜くんは、気にしないの?」

「気にしたって仕方ないし、それに」

「……?」

「……なんでもない」


淡い青の隙間から覗く紺色が揺れた。

何かを話そうとして途中でやめちゃうところが、出会って間もない頃の雪杜くんに戻ったみたいでなんだか懐かしく感じる。

あの頃は雪杜くんの全部が嬉しくて、私に何かを話そうとしてくれただけで喜んでたっけ。

今はその先の言葉が欲しくてたまらない。

本当に欲張りになってしまった。


「ゆ、雪杜くんって」

「?」

「ほ、本当に好きな人、いないの……?」

「え」


踏み込まないで欲しそうだったのに、ちゃんとわかってたのに
こんなこと聞いちゃってごめんね。


「……秘密」

「え、ずるい……っ」

「うそ」


優しく、儚げに笑う。


「いるよ」