春に笑って、君宿り。

この間の、雪杜くんの教室での事をふと思い出した。


「この間、クラスの女の子たちから好きな人について聞かれてたよね?」

「……聞いてたの?」

「うっ」


スミマセン。
盗み聞きしちゃってました。スミマセン。


「……はあ。で、それがどうしたの」

「あ、え、えと……」


一気に気まずくなって、視線を落とす。


「雪杜くん、自分の噂に対して否定とか肯定とか全然しないのに、この間ははっきり否定してたなーと思って」

「……」

「ほ、本当に変な噂ばっかり流れちゃって、大変だよね、あはは……」


き、気まずい。

聞いちゃいけなかった
踏み込んじゃいけなかった

そんな気がしてダラダラと変な汗が出てくる。


「噂なんか、気にしなくていいよ」

「え」


もうこれ以上触れないでと言われているみたい。
でも、止まらない。

焦りと好奇心と、やっぱり焦り。