春に笑って、君宿り。

「い、いや……」


追いつきたいだけなのに。

雪杜くんと同じ場所に立って、
その先で、私と同じ気持ちになって欲しいだけなのに。

どうしてこんなにうまくいかないんだろう。


「……ゆ、雪杜くんに、追いつきたいの」

「俺に?」


そう言って、私の方に来てくれる。

心配そうに、不思議そうに顔をのぞき込むのやめて。

私ばっかり、どんどん君を好きになる。

追いつけなくてじたばたして、(つまず)いていると、
君はこうやって迎えに来てくれるんだね。


「いいんだよ、あんたはそのままで」


そして、フッと微笑んでそう言った。
ずるい。ずるい。

全然よくないのに。
このままじゃ雪杜くんに好きになってもらえないんだもん。


「……」


雪杜くんは強いね。
ありもしない噂を好き放題言われたって否定も肯定もしないで
自分が分かっていればそれでいいって、そんな感じで。

……ん?


「ね、ねえ雪杜くん」

「うん?」