春に笑って、君宿り。

だ、だめ!!
だめだよ!!!!

教室の中で女子に囲まれて、くんくんと匂いを嗅がれている雪杜くんの姿を想像して、
泣きそうになって目をぎゅっと閉じる。


そのくせ体が冷たくなって動かないから、ほんとに弱虫だ。


雪杜くんの変な噂はあんまり聞かなくなった。
雪杜くんのいいところをみんなに知ってもらえた。
それってすごく嬉しいことだし、実際嬉しいよ?

でも、私じゃない女の子と一緒にいるのは、やっぱり嫌だよ~!!


「雪杜くん、好きな人できたって本当?」

「どんな人なのか知りたい!!」

「っ!!」


そんな声が聞こえて、つい息を止めてしまう。
盗み聞きなんて最低だ……。

でも私も聞きたいから、聞いちゃう。


「ねえねえ、その好きな人って」

「うるさいな、そんなのいないよ」

「きゃあ!!」

「クールなとこもかっこいい!!」


チクンチクンと胸が痛む。
わかってることじゃない。

今更傷ついてられないでしょ、花暖。

雪杜くんに好きになってもらうんでしょ。

なるんでしょ、雪杜くんの「好きな人」に。