春に笑って、君宿り。

なんで疑問系? って言いながら微笑む雪杜くん。


「……私ね、今まで付き合った人の言うことをただ聞いてたらいいんだと思ってたの」


持っていた教科書をテーブルに置いて、視線は落としたまま。
今までのことを思い出す。


「付き合って別れてを繰り返してるうちにね、嫌われるのが怖くなっちゃって」


『ないわ、マジでお前とか』
『ごめん無理』
『俺、もう無理だから』


今まで浴びてきた別れの言葉を思い出して、少し声が震える。
……声と言うより、体が震えてるのかな。

指先も冷たいや。


「いつの間にか本音を言ったら拒絶されるんじゃないかって思うようになって。自分の気持ちを話すことに臆病になっちゃっ、て」

「……顔には出てるけどね」


雪杜くんが立ち上がって私の隣に座る。
私と同じ桜の香りがふわっと香って、心地いい。


「ええ~……そんなに出てるかな? これでも、笑ってるつ、つもりなんだけど」

「うそ、つかなくていいよ」


腕が伸びてきて優しく引き寄せられる。
あったかい。
好きな人の体温が、こんなにもほっとする。


「失うことばっか考えるのってさ」

「……」