春に笑って、君宿り。

リビングに、ふたりきり。
向かいに座る雪杜くんをちらっと見た。


「……ん?」

「なっ、なんでもない!!」


外と違って静かだから、かな。
急に意識しちゃって、落ち着かない。


「勉強って気分じゃなくなった?」

「えっ、あ、いや、でもせっかくだし、頑張りたい!!」

「先輩がそう言うなら全然付き合うけど」

「う、ん。ありがとう」


なんてことない顔で、教科書や難しそうな参考書を広げる雪杜くん。
わあ、たくさん付箋貼ってる……。

わ、私も頑張るぞ!!
慌てて鞄から教科書とノートを取り出す。
教科は数学。
……萌ちゃんと、乃奈香ちゃんが教えてもらってたから。

よーし、今日こそはこのページ暗記するぞ!!


「……先輩さ」

「え?」


雪杜くんは頬杖をついて、参考書じゃなくて私の方を見ていた。


「いつもあんな風に人助けしてるんだ?」

「いつも……ってほどじゃないけど……」


困ってそうな人は、どうしても放っておけないんだよね。