春に笑って、君宿り。

横断歩道が青になって、一緒に歩き出す。
ただ歩いてるだけだけど、やっぱり特別に嬉しい。


「……って、雪杜くん、ちょっと待ってて!!」

「は、え!?」


すれ違ったおばあさんの方に駆け寄る。
杖をついてはいるけど、ふらふらで今にも倒れそうな弱々しいこの人が、どうにも気になっちゃったから。

どう考えたって信号が変わるまで渡り切れるとは思えない。


「おばあさん、私がついてるから、ゆっくり渡ろう」

「ああ、ありがとうお嬢ちゃん」

「困ったときはお互い様だよ!!」


杖と反対側に立って、おばあさんの肩を支える。


「じゃ、俺は荷物担当」

「!! 雪杜くん」

「あらあら、ありがとう」


後ろから追いかけてきた雪杜くんが、おばあさんの買い物袋をひょいっと持ってくれた。

待っててって言ったのに、来てくれた。
やっぱり優しいのは、雪杜くんの方だよ~……。

信号は変わっちゃったけど、無事に渡りきることができた。

おばあさんのお家はすぐ近くだそうで。
どうせだし、とおばあさんの家まで2人で送り届けた。

うん、いいことした!!