春に笑って、君宿り。

***

「花暖!!」


部屋の向こうで、お母さんが興奮気味に私を呼ぶ。


「噂のカレ、来たわよ!!」

「!!」


私は部屋のドアを勢いよく開けて、お母さんに向かって両手を広げて見せた。


「お母さん!! 変じゃない!?」

「今日もかわいい!! しっかりね!!」


お母さんには毎日のように雪杜くんの話をしている。
今となっては貴重な恋バナ仲間だ。


「それにしてもいい男の子じゃない~、キスまでなら許すわ」

「べ、勉強してくるだけだよ!!」


もう!! お母さんったら、変なこと言わないで!!
火照った顔のまま階段を降りて、愛しい雪杜くんがいる玄関に向かう。


「雪杜くん!!」

「……あ」

「!!」


雪杜くんが、両手をバッと広げたのを見逃さなかった。

も、もしかして、私がまた飛びつくと思ったのかな!?
それを、抱き留めようと思ったのかな!?