春に笑って、君宿り。

「だって、雪杜くんが最近環くんと仲良いから……」

「それが何か気に障った?」

「……」


しゅんとしたってダメだってば。
そんな、可愛い顔したって。

ああ、もういい。

もう大人になんてなれなくたっていい。


「雪杜くんが、悪いんだもん」

「……?」

「雪杜くん、いつも環くんの話する。私の知らないところで2人が仲良くなってるのがすごく羨ましいの。……萌ちゃんや乃奈香ちゃんに優しくしてるのも、羨ましすぎてどうにかなりそうだったの」


ぎゅううっと、ぬいぐるみを抱きしめる手に力が入る。

ごめんね苦しいね。
でも私もすごく苦しいの。


「……先輩が勉強、頑張ってたのって」

「……っ、環くんみたいに頭が良くなれば、」


女の子として、意識してもらえるって思って。
私の子と、好きになってもらえると思って。


「……」


「好き」とは言えるけど「好きになって」とは言えない。
さすがにワガママすぎる、し。

こんなの、雪杜くんが私を意識しなくて当たり前だ。