春に笑って、君宿り。

「でも、先輩がそれ欲しがってたんだから……行くでしょ」

「ううう……っ」

「ちょ!? 泣くか花吹雪飛ばすかどっちかにしてくれない!?」


我慢していた涙がだーっと滝のようにあふれ出る。
ごめんね、あとで床拭くからね雪杜くん。


「花暖先輩」

「?」

「誕生日、おめでとう」


神様。私生まれてきて良かった。

お母さん。生んでくれてありがとう。

お父さん。花暖はお嫁に行きます。

雪杜くん。

大好き。


「……ねえ、機嫌直してくれた?」

「え」


そういえば。
さっきまでの嫌な気持ちが気付いたらどこかにいってしまっていた。

今は雪杜くんへの「好き」が大きく膨らんで、破裂しちゃいそう。


「えへへへへ」

「……直ったならいいんだけど、その笑い方はなに」

「雪杜くんが1人で、私のために苦手な遊園地に行ってこの子を買ってきてくれたのが嬉しくて……」

「いや、タマキ先輩にもついて来てもらったから、俺1人じゃない」

「また環くん!!!!」


どこまで私と雪杜くんの間に入ってくるの!!

信濃くんよりよっぽど入り込んできてるよ……!!


「ねえ、なんでそんなにタマキ先輩に反応するわけ」

「……」


うさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
……桜の香りだ。