春に笑って、君宿り。

「……っ」


追いかけよう。
追いかけて、それで、ごめんって言って、それで。

許してくれるかな。
嫌わないでいてくれるかな。

ううん、迷ってる場合じゃない。
せっかく2人きりになれたんだし、こんな嫌な雰囲気で終わりたくない!!


「よし!!」


気合いを入れて立ち上がったとき。


「……花暖先輩」


雪杜くんがリビングに戻ってきてくれた。
手には、見覚えのある柄の小さな袋。


「あれ、それって……」

「……はい、これ」


耳まで真っ赤にして、それをズッと私に差し出してくる。
え、ちょ、ちょっと待って?
う、う、受け取っていいの?


「え?……えっ!?」

「はあ……やっぱり忘れてたんだ」


私にその包みを押しやって、ポケットからスマホを取り出す雪杜くん。

私があげた扇子のストラップがぶら下がっていて、

まだ、つけていてくれたんだ。