春に笑って、君宿り。

「今日ずっと怒ってたじゃん。俺、なんかした?」


少し下を向いて、
探るように上目遣いでそうやって聞いてくる。

ねえ?

それ、いったいどこで覚えてきたの!?
誰に教わったの!?


「気が狂いそう」

「どうしてそうなるの」


自分の膝を抱え込み顔の下半分を腕の中にポスッと埋めてから、小さくため息をつく雪杜くん。

むう。拗ねたいのは私の方なのに。
他の女の子に優しくしたのは雪杜くんでしょ。

……そりゃあ、彼女じゃないんだし嫉妬する権利だって私にはないんだけどさ。


「……」


むっとしていたら、雪杜くんが無言で立ち上がって。
そのまま何も言わずにリビングから出て行ってしまった。


「……う~……」


テーブルに突っ伏して、小さく声を出す。

違うのに。

こんな風に嫌な空気にするために
あんな風に悲しそうな顔をさせるために

私は君と一緒にいるんじゃないのに。

こんなに大好きでも、いつだって素直でいられるわけじゃないんだと知る。

雪杜くんと出会ってから、自分でも自分の感情が分からないことが多すぎて
心が忙しいよ。