春に笑って、君宿り。

「いっ、いい!! 飲める!!」

「ふ、やっぱ紅茶苦手だったんだ」

「え!?」


我慢できないというように、ぷっと噴き出す雪杜くん。
そして、首を傾げるようにして私を見る。

さっきの意地悪な表情とは全然違う、すごく、優しい表情。


「そんなに無理して大人になろうとしなくていいのに」

「……」


また口をとがらせて、顔を逸らしてしまう。

今日ばかりは雪杜くんの笑顔に負けない。

大人になろうとしなくていいって、言われたって。
今のままの私じゃ、雪杜くんに振り向いてもらえないんだもん。

そんなこと言うなら私は、どうしたらいいの。


「ねえ、花暖先輩」

「……」


目だって合わせてあげない。
そんなふうに名前を呼んだって、ダメなんだから。


「なんで怒ってるの……?」

「お、怒ってないよっ」


あああ。
つい雪杜くんの方を見てしまう。
とことん弱い。

だって新技「寂しそうな声・改」を使われたら、振り向くしかないじゃないかぁぁ……。