「うん、イギリスのすももらしい」


よく分かったね、と微笑んでくれる。
つられてしまいそうで、思わずふいっと顔を逸らした。

なによっ。
萌ちゃんにも、乃奈香ちゃんにもそうやって笑ってたくせに。


「……」


紅茶。
初めて口にしたときは、苦みがあってとても飲める物じゃないと思ったのを覚えてる。

萌ちゃんにはいつも「はなのは子供舌だな~」って笑われたし。

けど、雪杜くんにもっともっと意識してもらえるようになるためには、紅茶くらい飲めるようにならなくちゃいけないんだ!!

もっと勉強もして環くんみたいに頭が良くなって、
萌ちゃんみたいに綺麗になって、
乃奈香ちゃんみたいに包容力のある女性に。


「……あれ?」


ふわっと、チョコレートの香りがする。
目の前にあるのは、紅茶……だよね?


「アールグレイショコラだよ、先輩の口に合うといいけど」

「う、うん、いただきます……」


一口含んで、こくっと飲み込む。
想像していた紅茶の苦みなんて全然なくて、甘くておいしい。
これ、本当に紅茶?


「必要ならミルク、入れるけど?」


隣に座った雪杜くんが意地悪に微笑んだ。