*花暖side*

「先輩って、紅茶飲める?」

「えっ、う、うん……!?」


きちんと飲んだこともないくせに、子供と思われたくなくて嘘をつく。
大人で、余裕のある女になりたいと今日ほど思ったことはない。


「……」

「……」


『とりあえず、もっかい中入ろう』


みんなと解散してから、一言そう呟いた雪杜くん。
その声がひどく切なそうだったのを思い出して、少しだけ口をとがらせる。

どうして雪杜くんが寂しそうなの。
寂しいのは私の方なのに。

もっと一緒にいたいって思ってたの、どうせ私だけなんでしょ。

どれだけ私が好きって伝えても信じてくれないくせに。
私の知らないところで、みんなと仲良くなってるくせに。

私はこんなに雪杜くんを独り占めしたいのに。


「はい、どーぞ」

「あ、ありがとう……」


わ、かわいいティーカップ……!!


「これ……すもも?」


カップに描かれている絵柄をまじまじと見つめながら、雪杜くんを見る。