春に笑って、君宿り。

「……」


結局、先輩がどうして怒ってるのか今日一日だけではわからなかった。

勉強教えてあげることもできなくて
先輩の力になるどころか、機嫌を悪くさせてしまった。

普段は、後輩だからといって簡単にゼロ距離を許す先輩に苛立つくせに
全く触れることがなければこうして拗ねる。

何が反撃開始だ。

全然成長できてない。ただの子供だ。

こんなの、先輩に子供扱いされたって文句言えない。
男として見てもらえなくたって、不思議じゃない。

先輩が、遠い。


「ねえはなの」

「なに、萌ちゃん?」

「雪杜が話あるって言ってたよ」

「「えっ」」


花壱先輩の言葉に、俺と先輩が同時に声を上げる。
ねえ? 何言ってんの?
俺、そんなこと一言も……。


「カノちゃんも雪杜くんに話があるんでしょ?」

「ちょ、乃奈香ちゃん!?」


花壱先輩は謎のウインクを飛ばしてきて
小池先輩は両手でぎゅっと拳を握って微笑んできた。


「そういうことなら、カノじゃなくて俺を家まで送ってくれよ統河」

「お前のアトリエになんざ興味ねえよ」

「カノなら、奈冷が送るらしいから安心しろよ」