春に笑って、君宿り。

現実逃避なのか、はたまた前向きに取り組もうとした末路なのか。
先輩達は、好きな物に例えて考えるのが向いているようだった。

自分の世界観がガラッと変わるいい機会だったので、
俺にとっても有意義な時間だった。


気付けば一日中みんなで勉強をしていた。
うん、とてもいい時間になった。

……たまに般若のような顔をしている花暖先輩が気になったけど。

分からないところでもあるのかと思って声をかけようとしても
すぐ顔を逸らされるから。

多分、俺が何かしてしまったんだろうな、って。

休みの日にせっかく一緒にいるのに
少し気分は落ち込んでいた。


「じゃあ、今日はありがとうな奈冷」

「はい、またいつでも」


いい時間になって来たので、勉強会は終了。
女子組はなんだかげっそりしていて、男子組はけろっとしている。

あの遊園地の時とまるで反対の状況におかしくなって笑いそうになった。


玄関から出て、先輩達を見送る。


「カノ、家まで送る」

「え、大丈夫だよ……?」

「通り道だろ? もう遅いし」

「信濃くんこそ、家遠いんだし急いだ方が……」


そんなやりとりが聞こえてきゅっと胸が痛くなる。

「俺が送るからトーガ先輩はさっさと帰ったらいいですよ」
そう言って花暖先輩を自分の方に引き寄せられたら。

口から出かけた言葉をぐっと飲み込んだ、意気地なし。