春に笑って、君宿り。

「あっ、雪杜」

「はい? また分からないところでもありました?」

「いや、あたしじゃなくて池ちゃんのも見てやってくれない? 天才のあたしですら何言ってるかわかんないんだよね」


小池先輩?
彼女なら俺の力なんて借りなくても、自分でなんとかできそうなイメージだったけど。


「じゃあ、せっかくだし……雪杜くん、隣いいですか?」

「はい、どうぞ」


俺が返事をすると、小池先輩が花壱先輩と入れ替わって俺の隣にくる。


「小池先輩も数学ですか?」

「うん……今解いてるところがどうしてもわからなくて」

「どこですか?」


首を傾げて小池先輩を見る。
少し顔を赤らめた小池先輩は、控えめにノートと教科書を交互に指差した。


「こ、ここまではわかったの」


小池先輩がここまで導き出していた式が、見たことのない解き方をされていて一瞬硬直する。

確かに合ってはいるし、こちらも答えにたどり着くにはあと少しというところ。


「それでね、ここからこうなっていくと思うの」

「……? はい……」


ノートに続きの式を書いていく小池先輩。
しかし、俺が考えていた続きとは全く違う視点から導き出されたもので、理解するのに時間がかかった。

……数学にこれと言って決まった解き方はないが、ある程度のルートは決まっている。
こんな解き方もあるのかと、ついまじまじと見てしまっていた。


「……っここで、沖田総司が負けるわけないと思うの!!」

「これ数学ですよね?」