春に笑って、君宿り。

「2人が次元を超えた話をしてる……」

「同じ次元だし、タマキ先輩の弱いところを俺が覚えただけ」

「環くんの、弱いところっ!?」

「ねえなんかおかしな誤解してない!?」


たまに家に来ては一緒に勉強をしているので、いつの間にかタマキ先輩が弱い箇所も覚えてしまっただけだって。

何で今日はそんなに仏頂面なわけ?
俺、何かした?


「……」


隣に行って、勉強を見てあげたら喜ぶ?
頑張ってるねって褒めたら、笑ってくれる?
……それとも、後輩からそんなことされたって、別になんてことない?


「カノ」

「!」


ごちゃごちゃ考えていた時、花暖先輩の隣に座っていたトーガ先輩が距離を詰めた。


「見てこれ。暗記パンの作り方だって」

「!! 信濃くん、天才だよ……っ!!」


トーガ先輩のスマホの画面を覗き混み、ぱあっと表情を輝かせる花暖先輩。
……暗記パン?
そんなの作ってる暇あるなら1問でも多く問題でも解いたらどう。

2人のやりとりを見て嫌な感情がわき出る。

結局、誰にでもその距離感を許してしまうんだと。
何度痛感しても足りない。

先輩の言う「好き」は、俺の気持ちと一緒のものではないんだと。