春に笑って、君宿り。

「かわいい」と言って頭を撫でてくるくせに
「雪杜くん」と言って平気でゼロ距離を許すくせに

今更後輩の家に入ることでそんなに緊張してるの?


「……」


修学旅行のときといい
おそろいのストラップや匂い袋のことといい
今回のことといい

少しは俺のこと、男として意識してる……って認識でいいわけ?


「ほら、早く行こう」


確かめたくて、でもあと一歩が踏み出せなくて
伸ばそうとした手を引っ込める。

あーあ、これじゃトーガ先輩に舐められても文句言えない。
子供みたいだ。


「ゆ、雪杜くん」

「うん?」


みんなが待機してるリビングへ向かおうとしたとき、後ろから名前を呼ばれる。


「え」


今度は頬にめいっぱい空気を含んで
顔を赤くしている。
なに、君の感情ってどうなってるの?


「なに怒ってんの? 俺、怒らせるようなことした?」

「環くんと私、なにがそんなに違うの?」

「はあ?」